この楽団は、知る人ぞ知る(ということは知らない人がいっぱいいる)「農業に従事する人、農業に関係する職業に従事する人」が全道から集まって、農閑期にだけ集まって活動するアマチュア団体。年一回の定期演奏会を行っているらしい。アマチュアで、農業関係者だけでオーケストラを維持し、活動するなんて、なんだかすごい。もちろんアマチュアだから出来ることだとおもうけど。
会場(士別市民文化センター大ホール)の周りはクルマクルマで駐車場所を見つけるのに苦労した。ホールは、立錐の余地は少しあるほどの大入り。音響は決していいとは言えないけど、そんなの団員の熱気が補ってあまりある。
一曲目のロッシーニ「ウイリアム・テル序曲」、前半は団員の緊張感がこちらにも伝わってくるようで、はらはらしたが、第4部の出だし、トランペットが高らかに鳴ると、そこから歯切れの良いリズムが生まれ、聴き知った部分でもあるから、快調に聞こえるようになった。結果、すばらしい。
二曲目、はじめて聴く(とおもう)ものだった。ウェーバのなんだったか、協奏曲風の曲。ソロはファゴット。ソロ奏者は三木多恵子さんという士別出身で、札幌で活動なさっているという方。ファゴットという、鈍重そうな楽器を軽やかに、あるいは鎮かに演奏なさっていた。いいものを聴かせていただいた。結果、すばらしい。
三曲目、ビゼー「カルメン組曲」から5曲、有名な曲だから、傷無く演奏するのは大変だと思う。頑張りすぎて音が割れる場面もあったけど、それはそれ、演奏者の熱意の表れ。人に聴かせるのはなかなか難しいのに、これだけやれたら、なんも文句ない、とおもった。結果、すばらしい。
そして四曲目、シベリウスの2番の交響曲。これを聴きたかった。いくつかの団体のいくつかの演奏を何度も聴いてきた曲だ。もちろんひいきの演奏もあるけど、いつも気分は盛り上がる。大地が謳う、きょうの演奏もそんな感じがした。醒めた目で聴くつもりが、しらぬまに盛り上がってしまっていた。結局、とてもすばらしい。
アンコールはシベリウスの「悲しきワルツ」。大いに盛り上がって醒めるいとまを与えず演奏されたから、その落差激しく、気分がついて行けなかった。たぶん、切々たる小品を切々と演奏したんだろうけど、多分聴衆以上に盛り上がった団員も動転していたのではないだろうか。
なんだか思い上がった感想を書いてしまった。ワールドカップジャンプでも盛り上がるし、盛り上がるというのは大変気分のよいものだ。なんでもかんでも盛り上がれるというものでもないけど。
行く前、好天に誘われて、岐登牛山をチョットだけのぞき込んできた。久しぶりの好天、天は二物を与えず、というようなことでもないけど。
